冷やし中華 ひと時の休息に「エッセイ」をご用意致しました。


冷やし中華
 夏の食べ物といえば、かき氷、スイカ、枝豆などがありますが、忘れてはいけないのは冷やし中華ですね! さっぱりとした酸味とツルツルっとした、のどごしで、どうにも食欲が出ないっていう日でも気軽に食べられる美味しさがあります。
普段冷やし中華を食べていても特に気にしませんが、冷やし中華って言うくらいだから中国が発祥の地って思いませんか?

でも冷やし中華の発祥は中国ではありません。
実は、冷やし中華は宮城県の仙台で生まれた食べ物なのです。

涼拌麺(リャンバンメン)、今から七十年以上も前、初めて世に出た冷やし中華はこう名付けられました。
仙台の「龍亭」にある創業者四倉義雄の資料によると「昭和十二年、全国の業界に先駆けて、涼拌麺を開発し…」という記録が残されております。

 当時の中華料理店では、現代とは違い冷房などもなく、油っこく熱いというイメージの中華料理は敬遠されがちで、夏場の売り上げ減はとても厳しく深刻なものでした。
 そこで、暑い中でも食べて頂ける冷たい麺料理の開発に取り組んだのです。夏バテ防止に栄養のバランスを考え、野菜をふんだんに使い、食欲増進に酸味を加え、試行錯誤の末に考案されたのが《涼拌麺〜冷やし中華》です。

その後、キュウリの千切りに、トマト、ハム、錦糸玉子。色とりどりの具と、水でキュッとしめた中華麺を、酸味の利いた醤油ダレで食べる。あの鮮やかな色彩感覚といい、油気のなさといい、どことなく「日本的なもの」になり通称「富士山」と呼ばれる中華のスタイルになりました。

そもそも中国で冷たい麺料理に出会ったことがありません。
冷たい麺料理は「のどごし」が命です。ツルツルとしたのどごしの好い食感を生むためには、茹であがった麺を水で素早く締めなければいけないのですが、水の悪い中国では水を使った調理法は敬遠されています。
あったとしたても、麺はうちわで仰いで冷ます程度で、日本のキンと冷えた麺料理と比べると明らかに違います。

一方、きれいな水がどこででも手に入る日本では、ざるそばなど昔から冷たい麺料理が食されていました。 中華そばも他の麺と同じように冷やしてみれば良いのではないかと組合員達が発想したのも、美味しい水に恵まれた日本の風土があってこそだったと言われています。

冷やし中華は、今では更に進化しています。
醤油ダレの代わりに胡麻ダレをかけたり、名古屋発のマヨネーズつきが全国的に広まったりと、バリエーションも増えています。

今後、どんな冷やし中華が登場するのか楽しみです。食欲がなくなる蒸し暑い夏を、冷たい麺でしのいできた日本人にとって、冷やし中華はまだまだ改良、開発、そして進化させられる食品のひとつなのでしょうね。