クリームシチュー ひと時の休息に「エッセイ」をご用意致しました。


クリームシチュー
 冬になると、夜には暖かい料理が嬉しいですね。中でも手軽に出来るクリームシチューはご馳走になりますね。

薄切りの牛肉があれば、肉じゃが。牛肉でもばら肉やすね肉の塊なら、ビーフシチューやビーフカレー。鶏肉だったらカレーはもちろん、寒い季節ならクリームシチューも出来ます。

ところで、日本にシチューが入ってきたのは、明治期になってからです。『西洋料理通』に紹介されているほか、1875(明治8)年に開店した芝浜松町の牛鍋屋「たむら」の広告には、「シチウ8銭」の文字がありました。牛鍋屋というからには、おそらく提供されていたのはビーフシチューでしょうか。
まだ、クリームシチューは登場していません。

クリームシチューが出てくるのは、戦中・戦後を通して食糧不足となっていた時代です、給食は栄養補給のための大事なものでした。カルシウム不足を補うため、脱脂粉乳が盛んに使われていたころです。そうした状況にあって、脱脂粉乳を用いたクリームシチューが定番メニューとなったのです。  
当時、脱脂粉乳のシチューは「白シチュー」と呼ばれていました。

 その後、学校給食を通じて広まった白シチューは、ホワイトシチューやクリームシチューなどと呼ばれ、料理書や料理番組でも紹介されるようになります。だが、広く家庭で作られるようになるのは、給食の登場からしばらく経ってからのことです。

1966(昭和41)年、ハウス食品は「クリームシチューミクス」という粉末状のルウを発売。白シチューをどうにか美味しくできないかと、カレーのルーを参考に開発を重ねた結果、生まれたのがこの商品でした。

発売から1年経った頃、シチューミクスは大ヒットとなり、これがきっかけでクリームシチューという名前が一気に定着しました。こうして、クリームシチューは冬の定番料理となったのです。

 クリームシチューについて、はっきりしない点は他にも多くあります。大正時代の『滋味に富める家庭向西洋料理』に載っていた「鶏肉のスチウ」には何か元ネタがあるのか。世界で日本のクリームシチューに似ている料理はほかにないのか。調べ切れていないところもたくさんあります。

確かなことは、クリームシチューが日本の食卓に頻繁に上るようになったのは1960年代以降だということです。冬の定番料理の歴史は、意外にも浅かったのですね。